アラセブシングルの老境サバイバル日記

往年の「若さと美貌」はどこへやら 、到達点は何と「馬鹿さと貧乏」だった。

「独りだから欺されたのよ」

私は体力がなく通勤が辛かったので、現役の時は転勤の度に職場近くの安い賃貸住宅に転居していた。最後の賃貸は長屋で隣りに老夫婦が住んでいた。壁が薄く、ご主人のイビキが筒抜け。更年期の体調不良と最大級のイビキとで、私はスッカリ疲れてしまった。そんな時、元同僚から家を買う話しが持ち込まれた。

 

芭珈紗:元同僚のご主人が工務店をしてたの。ちょっと違和感があったけど。
ビン坊:フ~ン
芭珈紗:よく考えて判断すべきだったけど、心身ともに疲れてて・・・。家は高台にあって緑に囲まれてるのが魅力だった。
ビン坊:それ不便ってことね。
芭珈紗:知人らが「3階建て?」「狭い」「カモにされてるで」「不便で遊びにも行けない」と反対した。
ビン坊:そりゃそうだわ。
芭珈紗:でも長屋周辺の人間関係に耐えきれず、結局は購入したの。
ビン坊:長屋じゃなくもっと環境のいい賃貸に住むべきだったね。
芭珈紗:転居して何年か後、玄関の天井にシミができたの。それで外壁に不備があって雨水が染み込むことが分かったの。何十万円も掛けて外壁を貼り替えた。そう言えば、入居してすぐ、大雨のとき雨漏りがした。あの時、気付くべきだった。
ビン坊:後の祭りね。
芭珈紗:そんな様子を見て近所の人が言ったの。「独りだから欺されたのよ」って。
ビン坊:ところで、アンタの元同僚で工務店の奥さん、その辺の事情知ってんの?
芭珈紗:同じ地域だし共通の知人も多いから、耳には入ってると思うけど・・・。切羽詰まって、建築の不備も知らず買い手を探してただけ。責める価値もない。
ビン坊:アンタ、人が好いのか、バカなのか。 

    

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この家に転居後、元同僚がご主人に苦労していると聞いた。私が家を買えば、実情が耳に入ると予想されただろうに、恥を晒してまで家を売らなければならない程、追い詰められていたのか。私はそう思い、立腹しないよう自分を戒めてきた。人が好いからではなく健康のためである。幾つかの点で欺され、高い買い物をしたが、ローン返済のため禁煙できたのが唯一の収穫。その後、めったに風邪を引かなくなった。